地と水の絆 ~8
「…どうして?」
船の近くまで彼らが歩いてきたときに…それを見た。
船の前に一人の青年が立っている。
浅葱の髪にレムリア特有の衣装…
水色のヴェールに…
そして金の目
「ピカード!!」
そう、その名を呼びジェラルドがピカードに駆け寄る。
「一人で逃げてこられたのか?今からみんなでお前を助けに…」
「……」
「…ピカード?」
様子がおかしい。
そして微かだが…あの三人のエナジストが使ったエナジーと
同じような力を感じる。
その金の目に…何も写していない…
「…消えなさい」
「!!!!!!!」
「!!?」
何が起こったのかわからない。
一瞬のうちにジェラルドの身体を水が襲い掛かり
その反動で木に身体をぶつけられた。
その距離は結構ある
ジェラルドが飛ばされた道には血が転々としている。
「…!ジェラルドッ」
メアリィが傷だらけになったジェラルドを回復させるために傍に寄る。
ピカードは手を振り上げている。
その手には水が絡み付いている。
「ピカード…どうしたの?…何があったの…?」
ジャスミンがふらふらとピカードに近づく。
「駄目ッ!今近づくと危ないわ、ジャスミン!!」
ピカードに徐々に近づくジャスミンを止めようとシバがジャスミンのマントを引っ張る。
「ピカード!私あなたに謝らないといけない…私…!!」
「ジャ…スミン…だめ!!!」
ジャスミンの声に反応してピカードがこちらを振り向く。
そして冷たくこう言い放った。
「謝る?何を謝るというのです?
そんな言葉は必要ありません…あなたのその身の犠牲で充分ですから」
そういった後。ピカードはジャスミンに向かって無数の氷の刃を放った。
「!!」
「トルネードスピンッ!!」
シバがジャスミンの前に出てエナジーを放つ。
「シバ…?」
「何か…おかしいわ」
ピカードの放ったエナジーが力を増す。
風で跳ね返そうとした氷の刃がシバの起こした風をかき消す。
その刃はジャスミンとシバに襲い掛かった。
「きゃああ!」
遠くに吹き飛ばされ地面に転がる。
乾いた地面から砂が巻き起こる。
2人が吹き飛んだのをみてピカードが呟く。
「…足りない、悲痛の悲鳴だけでは…
絶望しなさい…それを感じさせてください…」
「何を言ってるんです!?
こんなことして許されると思っているんですかッ!!?」
後ろからイワンがジンを従えてピカードに飛び掛る。
「ブリッツ!」
「……」
背後からの攻撃だというのにそれに動じない。
ただ少しからだの向きを変え、腕を伸ばすとその場に水のバリアが作られ
ピカードはイワンの攻撃を跳ね返した。
「な…何ッ…」
イワンが空を舞う。
そして地面と叩きつけられる。
「!!!」
ピカードは容赦なく次々と傷つけていく。
その瞳には何も写さず…ただその手のひらから水の力のみ発動し続ける。
…誰も知るはずがない。
今彼自身は彼のものではなく…金の竜によって支配されているのだから…
「ピカード…どうし…たんですか?」
イワンが身体中の痛みに堪えながら問う。
それをピカードが見下し、答える。
「何も…?何がそんなに不思議なんです?
ボクには必要なんです…絶望という名の力が」
ピカードが水から氷の刃を作り上げる。
「あなたには逝ってもらいますよ?
それでどれだけの力が得られるのかはわかりませんけどね」
少し笑いながらその刃を手に取る。
普通の剣とさほど変わらないものだ。
「さようなら」
「!!」
その刃を下に向け、イワンに向かって突き刺す。
カキィィンッ
「!?」
何かによって氷の刃が切り裂かれる。
イワンの目の前に…誰かが立っている。
ピカードが不敵な笑みを浮かべる…。
「ロビン…ッ?」
イワンがその人物の名を呼ぶ。
その名を呼んだ後、イワンはその場に倒れた。
「ピカード…いい加減にしろ、こんなことをして何が楽しい?」
ロビンの手にはしっかりとソルブレードが握られている。
それで刃を切り裂いたらしい。
「…楽しいですよ?人々の悲鳴を聞けるんだ
それで身体を構成できるというのなら…これほどいいことはない」
「何言ってるんだ…?ピカード」
「わからなくていい…知らなくていい…
黙って殺められればそれでいいんです」
ピカードが腕を左右に広げる。
そしてそれぞれの手に水を発動させていく。
片方はロビンに向かって…そしてもう片方は…
「ッ!だめだ!!!」
すぐロビンはそれに気付く…が
「遅い」
まずロビンに向かって一発放たれる。
「ぐあっ!!」
そのエナジーでジェラルド同様遠くへ飛ばされる。
そしてもう片方は…傷ついたジェラルドとそれを治療しているメアリィに向けられていた。
それに気付いたメアリィはジェラルドの前に躍り出る。
「やめろっメアリィ!」
ジェラルドがそう叫ぶ。
だが…エナジーの塊はメアリィを直撃する。
「ああ!!」
後ろに飛ばされてきたメアリィを後ろでジェラルドが受け止める。
白いその服が少しづつ赤に染まる。
ジェラルドは動けそうに無い…
しかしピカードはこちらに向かって歩いてくる。
「今から殺します、ボクに君達の力を味わせてください」
そういって手を構えたとき…静止がかかった。
「待て」
低く落ち着いた声がその空間に広がる。
「どれだけ…地を血に染めれば気が済む?」
声を聞いてピカードが…ガルシアの方を向く。
「血に飢えたか?ピカード」
明らかにガルシアは怒っている…表情に出ている。
「あなたは何です?今からですよ…
あなたの絶望の声を聞こうと思って残しておいたんですから」
「黙れ」
「何がお前をそうさせた?一体何があったといいんだ?」
ガルシアがスタスタとピカードに近づく。
「!!」
シュルッとピカードは水で
小さな短剣を作り上げた。
「近づくな…」
その剣を前に構える。
しかし…ガルシアは足を止めない。
ピカードの目の前に立つ。
「話せ」
「何故話さなければいけない?」
「……」
少し間があく。
そして…ガルシアは言った。
「仲間…だから」
――――――――――!!
酷く寂しい目…
「仲間を守れなかったやつに…
仲間なんて…言われたくないな…ピカード」
「何を…言ってるんです…?」
【発動するあのエナジーの渦の中で…】
【止められずその場に残してしまったのは…誰だ】
「でも…これ以上全員を傷つけさせるわけにはいかない
…お前自信もな…」
「!?」
「”一人で充分”…それも駄目…か?」
ぐ…さっ
―――――――――――!!!!!!!!!
ピカードの手を生ぬるいものがつたる。
それは地にも落ちていく。
赤い…血…
「お前に人は殺せない…
それはオレが…よく知ってる…」
ピカードの持っていた短剣はガルシアに深く突き刺さっている。
ガルシアの身体がだんだんと支えをなくしピカードに寄りかかっていく。
ピカードは驚きの顔を隠せない。
自分の手が…血に濡れる…
「…ピカード、すまない
こうすることしか…考えられな…かった」
―――――――――――…どう償えばいいか…わからなかったんだ
―――――――――――お前を…守りきれなかった…こと
自分もガルシアも鮮血で染まっていく。
次第に重くなり…自分に寄りかかってくるその身体。
―――――――――――前ニモ…ナカッタ?
「…ガル…シア?」
ピカードが小さく呟く。
金の目に…精気が戻る。
「何で…倒れてる…の?」
ピカードは自分の持っていたソレを引き抜く。
…血まみれの…剣
「!!!!!!!」
慌ててその剣を遠くに投げ捨てる。
身体中の震えが止まらない…
「…何…ガルシ…ア?何が…起きたんです…?」
自分の身体に寄りかかって…
だんだんと青ざめていくその表情…
「ガル…シ…」
がく…ん
思い切りガルシアがピカードの寄りかかってくる。
傷口からは血がどろどろと流れ出る。
血に染まるガルシア
血に染まる地
そして…
また…血に染まった…自分
―――――――――――お前はお前自ら父親を…
―――――――――――手に持っていた小さなナイフで
―――――――――――お前…は
「いやだああああああああああ!!!!!!」
その場にピカードの悲鳴が木霊する。
思い出したくない思い出と認めたくない現実と…
すべてが混ざり合い…
ピカードはその場で意識を手放した。
=続く=
こんにちは、いきなりハードなお話でした(笑)
辛い話です。文才がない私が言える話じゃないですけど…書いてるこっちもなんだか…
気分はぶるーです…。
再会は一応果たしました。みなさま。ただ無事な人は誰一人いませんね。
ピカの大罪話が近づいてきて私としては少し嬉しいんですけど…あれも…痛いですからね…
でも次回は話はあまり動かない…ハズ。
アレクスさんが出てきたら…許してください。
(アレクスさん…どっかで出したいな~とか思ってたり)
久々にレス付きました(笑)
2004・02・10
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