地と水の絆 〜6
回る…
何もかもがまざって…何がどうなっているのかわからない。
ただ…見える。
当の昔に消えた…
『過去の…幻』
「リレイクさま…お連れしました」
ランブルがピカードを小脇に抱えて来る。
そのピカ―ドの様子を見てフルードがランブルに問う。
「…何をした?無駄にぐったりしているようだが…」
「こいつが一人で仲間全員を逃がしたんだ
それも エナジーをかなり消耗する方法でね」
「・・・・」
それをリレイクも黙って聞く。
ランブルがリレイクの方に向きを変えて言う。
「体力も限界のようです、今からなら儀式も成功するでしょう
今のこいつに抵抗する力はありません」
「そうか」
リレイクが玉座から階段を下ってくる。
そしてランブルはピカードを床に置き捨てる。
「リレイク様、我々は後ろにて待機しておきます
何かあったらお呼び下さい」
そういってランブルとフルードの二人は
黒い扉を開きリレイクのいる部屋を後にした。
その空間にリレイクとピカードのみが残される。
「…う」
重たい瞼を開ける。
ピカードは意識を取り戻した。
「ここは…ど…こ?」
まだ疲労が消えておらず身体を起こす事ができない。
「ここはレムリアの地下だ、レムリアの人間よ」
「!?」
二人が対峙する。
ピカードはその重たい体を少しずつ起こす。
ひじをついて…顔だけを上に向ける。
「お前が…親玉か?」
「そうだ、私はリレイク…この神殿を治める者」
ピカードの目に映る…。
血を思いださせる深紅の目。
そして闇を想像させる黒い髪。
この近くでは見た事がない。
それ以前に…神殿があったことも知らなかったが。
リレイクが前屈みになってくる。
「!!!」
そしてピカードの顎に手を添え、顔覗きこんでくる。
「見事な”金”だ…私が探していた者…」
「離せ…」
ピカードは手を振り払う。
そしてゆっくりと身体を起こしその場に立つ。
まだ…足がふらついている。
「ほお、まだふらついているのか…
かれこれあの脱走から3日はたったというのに」
「3…日?」
どうやら疲れ切って
3日間昏睡していたらしい。
「あなたは…エナジストなんですか?
でも4つのエレメンタルとは違う…あの3人の使った空間を裂く技…
あれは4つのエレメンタルに属さない」
「あれか?それはそうだ、私もあいつらもエナジストではない
もっともこの世界ではそういうらしいがな」
「この世界?」
「そうだ、私は元々この世界の者ではないのでね」
「!!!?」
会話が続く。
「私は人ではない
私の本来の姿は”黒き竜”だ
だからあの力はいわば能力といえるだろう」
「…竜」
しかし目の前には人の姿をしている者がいる。
しかし…目を見れば…あの深紅の瞳は人のものではない気がする。
「では、本題に入ろうか、ピカード」
「…名前?」
「ついこの間教えてもらった、名はピカードで良いのだろう?」
とん
リレイクがその場を歩き始める。
「お前は今回”儀式の器”に選ばれた」
「…儀式の器?」
「そう、この儀式を行うにあたり必要な3つの条件を全て満たした
おそらく全世界探したとしてもお前だけしかいないだろう」
リレイクが微笑する。
「3つの条件って?」
ピカードが聞き返す。
「一つ目はレムリア人であること
二つめは…金の瞳をもつ事」
「…確かにボクはレムリア人かつ眼は金だけど…」
「そして…三つ目…!!!!」
「!!!!」
ピカードの足元に赤の魔方陣が敷かれる。
「!…」
が…くっ
ピカードはエナジーの波動に絶え切れず方膝をつく。
ピカードを赤の魔方陣が取り囲む。
「何…を」
リレイクがピカードの前に歩み寄る。
「そう…3つ目…それは過去に大罪を犯していること」
「!!!!!!!」
ピカードの目の色が変わる。
そして次第に顔色も悪くなっていく。
「な…何を…し、って…」
明らかに何か動揺している。
そしてリレイクは勝ち誇ったような眼でピカ―ドを見つめ
そして…言った。
「”殺しのない世界”で殺しを行ったのは誰だ?」
「!?」
「手に持っていた小さなナイフでお前は何を貫いた?」
紅の瞳が怯える金の瞳を見つめる。
「いう…な」
ピカードは頭を抱える。耳を塞ぐ。
体中から汗が吹き出てくる。
「そうだ…お前は…自らの手で…父を殺した」
「!!」
消したかった過去
甦って欲しくない
『ピカードすまない、お前にこんな役を押しつけて』
自分にかかる赤い鮮血
次第に重くなり自分に寄りかかってくる父の身体
『みんなを…頼む』
そして…動かなくなった父の身体…
「うわああああああああ!!!!!!!!!」
その広い空間に悲痛の叫びが響き渡る。
外傷の痛みなどない・・・心がかき乱される・・・。
怯え切った目から涙が零れ落ちる。
しかしリレイクは容赦なく言葉を続ける。
「認められないか?
忘れたかったか?
そうだな、お前がまだ小さい時だ
ずっと記憶を封じていたのだろう?
事実から目をそらしたくて…」
「あ…うあああ!!」
リレイクは手を前に翳す。
そしてそこから赤の光を放つ。
「今回の儀式は”降臨”だ
お前の器を借りるぞ、ピカードよ!」
「!!!!!!」
!!!
部屋中が赤い光に包まれる。
そして…詠唱が始まる
――――――――――地獄に落ちた竜よ
――――――――――我が名を持って再びこの現世に降臨せよ
――――――――――”絶望”を望む金の竜よ
――――――――――今 お前にこの器を貸し与えよう
「さあ、来るのだ」
赤に金が混ざる。
そして魔方陣が光をまとう。
「いや…だ…ああ!!」
中に入ってくる。
何なのか見当もつかない…。
ただ、精神不安定な今のピカードには防ぐ術はない。
『邪神ファウナッハよ』
その瞬間あたりは金の光で包まれた。
そして赤の魔方陣の中にいたピカードの悲鳴が響き渡る。
ピカードの中に何かが入り込んでくる。
そしてそれはピカードの精神を押さえ込んで身体を乗っ取ろうとしてきた。
しかし…それを防ぐ術なんてない。
しばらくの時間がたった後魔方陣の光が消えうせた。
その中には立膝をつき両腕をぶらつかせているピカードの姿があった。
「ファウナッハよ」
リレイクが話しかけてくる。
もはやピカードの意識などない。
あるのは…金の竜の心。
「リレイク…」
すっと立ちあがりリレイクの元に歩む。
リレイクはそれを見てファウナッハを抱き寄せる。
「リレ…イク」
「久しぶりだな…
ファウナッハよ…今度もお前自らが器を作り出すのだ
”絶望”という名の材料でな」
ファウナッハがリレイクの胸を離れる。
「行…ク」
ピカードの身体に宿った金の竜…
ファウナッハはあの3人が使ったエナジーと同じような力を使い
この場を離れた。
広い部屋にはリレイクのみが残される。
「ファウナッハ…もう1度
本当の姿でお前に会いたい」
外は相変わらず赤い月が世界を照らす。
そしてレムリアから
金の竜が飛びたった。
=続く=
今回はリレイク&ピカード対峙編。『過去の大罪』については作中で語られるはずです。
…とういうかテンポ早くて読みにくいですね!
リレイク&ファウナッハ…
ファウナッハの名前は適当です。なんかの神話じゃないですよ。
ついでに雌の竜です。雄じゃないですよ〜ファウナッハちゃんは!
この二人の関係も・・・いつか明らかに・・・(っていってもわかるかもしれないですけど
条件…実際に必要だったのは最初の2つのみだったんです。
3つ目は…儀式成功の確率を高める為…心揺さぶったってとこだったんです。
次回はまたガルシアの方に戻ります。
…ピカと遭遇…とういうか再会を果すはず。ただ身体乗っ取られてますけどね。
さてさてどうなるんだか…。
実はこの「地と水の絆」という題は第7話〜8話にかかるんです。
書く私としても楽しみです(まだ書いてないってことです
マムクートじゃありません〜(笑)
2003・09・25
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