地と水の絆 〜5
「ピカード…お前どうやって…」
ガルシアは驚いた顔でピカードに問う。
「ちょっと頭を使って外に出してもらいましたv」
再会を嬉しがる暇もない。
通路の両側から兵が走ってきている。
ピカードは両側に腕を伸ばし、エナジーを発動させる。
『アクア』
床がそのおかげで水浸しになる。
そして…その上からもう一つのエナジーをかける…。
『チルド!!』
「!!」
当然ピカードの両側には大きな氷柱ができあがる。
しかも規模が大きく人も通れないほど大きく
通路の全てを氷が塞いでしまった。
「カギ…あけますね」
ピカードはさっき盗ったカギを指し込みガルシア達の牢屋を開けた。
「…聞くけど、どこから逃げるんだ?逃げ道全部氷漬けにして…」
ジェラルドが呟く。
「・・・・・」
ピカードは何も言わない。
「…まさか考えなしだったんじゃないだろうな!?」
「…来る」
「え?」
「昨日のエナジストか…これに気付くのが早かったな」
ガルシアも異変に気付き言葉をはく。
エナジーの波動を追うと
昨日見た事も感じた事もなかったエナジーを感じることが出来る。
ここへ近付いているようだ。
今の状況はまだピカードが牢屋の中に足を踏み入れていないので
中に7人が固まっている。
氷柱の両側から氷を砕こうとする音が聞こえる。
そして…向かってくる昨日のエナジスト
――――――――――――もう…時間なんてない…
ピカードはおもむろに詠唱を始めた。
その手にはしっかりと蒼い石が握られている。
『我が呼び声に応えよ』
『我の水の力に反応を示せ』
蒼い石はピカードのエナジーを帯び、青に光り輝く。
そしてそれを…ピカードはジャスミンに向かって投げた。
「!!!!…ピカード…コレ」
「お返しします、落としたでしょう?」
石はジャスミンが受け取った途端
牢屋の中…7人の足元に大きな魔方陣が描かれる。
「!!!!」
「な、なによコレ…外に…出られない!!」
シバが魔方陣から出ようとしたが叶わなかった。
光の壁がそこにできてしまっている。
『力の石よ、我が力、我が呼び声により』
『その力を解放せよ』
ジャスミンの手の中で石がピカードの呼び声に反応する。
当のジャスミンの顔は真っ青だ。
「だめ…ピカード、これを発動させないで!!!」
ジャスミンの言葉に耳を貸さない。
ピカードはただただ石にエナジーを送り続ける。
『我が声に応えよ』
『力の石よ』
魔方陣の光が強くなる。
それに比例して石もますます光り輝く。
「ピカー…ド!いけない…」
ガルシアがピカ―ドの思惑に気がついた。
しかし外に出られない以上…止める術もない。
『ラピスよ、蒼き石よ』
『その”転移”の力を持って』
『彼の者を離脱させよ』
がきぃぃん!!
ピカードの両側の氷ももうそろそろ砕かれる。
そして…近付いていたエナジストが今…この場に現れた。
「!!」
ピカードの背後に回る。
相変わらず黒のローブをまとっている。
しかし…今のこの状況に手を出してこない。
『力の石よ!!』
『その力を解放せよ』
『我が水の力を持って』
『その力を示せ!!』
いつもと違い遠くから詠唱を行っている為なかなか石が発動しない…。
「おね…がいだからッ!!発動して!!!!」
あたりは光で包まれている。
眩しすぎて何がどうなっているのかすでにわからない。
その瞬間…石は反応を起こした。
ピカードのエナジーに反応し、その力を送り返してきたのだ。
”了解した”とでもいうように…
ピカードは腕を振り上げる。そして…
『今、その力の解放のとき!』
『対象たる者を 離脱させよ!!!!』
「やめろ!ピカード!!!!!」
『テレポート!!』
ジャスミンの手の中の石が発動する。
魔方陣が光り輝き 7人をこの場から離脱させた。
「はあ、はあ…」
ピカードは振り上げた手を降ろす。
そしてそれと同時に身体のバランスを崩す。
ぐらっ…
その崩れそうになる身体を後ろで見守っていたエナジストが支える。
「お…前は…」
「見事だったな、
自らが石を手にして発動させるものを…遠距離から発動させるとは…」
「敵に…褒められても…嬉しく…ない…なあ」
ピカードはさすがに疲れ切っていてうまく言葉も話せない。
あがった息もなかなか整わない。
「一つ聞く、何故仲間だけを逃がして自分は逃げなかった?
もし、あの石を手持ちで発動させていたらこんなコトにはならなかったはずだ
自分も逃げる事が容易だったのに、何故無理をしてまでこうした?」
「人質は…一人でいいじゃない?」
「?」
「貴方達の言葉が真に信用できなかった…
何が目的でボク達が捕らわれたのかは知らないけど
全員を無事にさせておく…っていうことが信じられなくって…」
「自らが保険になって他の者には手を出すな…と?」
「…そう」
ピカードは目を開いていられなくなってくる。
…体力が限界にきている。
「ふっ、笑わせてくれる」
「…え」
エナジストがピカードを支えながら微笑する。
「あんなヤツら逃がしてくれても良い
我々の真のターゲットはお前だったのだからな」
「な…に」
ピカードはその言葉を聞き、目を見開く。
エナジストがピカードの顔を覗き込んでくる。
「見事な”金の瞳”だ
我が主が欲していたものそのもの…」
「…何を…い…って」
――――――――――――――・・・・
ずるっ
意識を手放す。
エナジストに寄りかかる形でピカ―ドは身体を崩していった。
「気を失ったか…」
「何を起こした?上が騒がしいようだな」
リレイクが上の異変に気付きそこにいたフルードに問う。
「おそらく…今から報告が来るでしょう、あ」
フルードの手元に赤い光が飛んでくる。
あの赤い月と同じ色…
【鼠に脱出されたがピカードは今オレの手中だ、今からそちらへ向かう】
「・・・・」
「聞こえました?リレイク様、ランブルからのようですね」
「…ピカード?」
リレイクは頭をかしげる。
自分の主が頭をかしげたのを見てフルードは気付く。
「あっ、名前をお知りではなかったのですね
”金の瞳を持つレムリア人”…ピカードという名です」
リレイクは玉座から立つ。
そして目の前にある階段を降りてくる。
「リレイク…さま?」
「ついでに来たのだ…この時が」
刻々と近付く”時”
それを楽しみにしているのかリレイクは笑みを浮かべた。
その…深紅の目には野望の光が満ちていた。
=続く=
新学期の投稿に成功…また台本書きのようにまたなってしまいました…。
ピカ…酷いですね。だめだめ、って言ってるのに聞かずにテレポート。
序盤からずっと言ってた「蒼い石」は「テレポートのラピス」です。本来こんな使い方なんてできませんよね…
遠距離から発動させるって…
次回はリレイク&ピカというとこです。
ここらへんから話がこんがらがってくるので…
きっとクッキーに忘れられた頃に投稿かもしれませんね…
気長に待っていただけると嬉しいです。
今からガルピカ本番です!!(ほんとか?
6話は書きたいとこなんです。でも難しくって私もわからないんですよね…。
さてさていつの投稿になるんだか…
2003.09.05
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