地と水の絆 〜13
一歩一歩…そこへ近づくにつれ足が重たくなる。
―――――――― 何を恐れているの?
「……」
シバから渡された紙を見ながら長い廊下を歩く。
そして…ある部屋の前で立ち止まる。
部屋から…弱りきった地の力を感じる。
「…入ります」
ドアを静かに開ける。
中からの応答はなく、視界に入るのはベッドの上で眠るガルシアの姿。
ピカードはガルシアのベッドの近くにあったいすに腰をかける。
そしてベッドで眠るその人の青白い顔をじっと見つめる。
――――――――― 自分が最後に見たときより…青白い
「ちゃんと…息、してるかな」
あまりの青白さに”生きているのか”ということに不安を感じ
まず椅子から離れた。
そして床に立てひざの状態でガルシアの顔に自分の顔を近づける。
呼吸音を確認しようとした…
しかし、それはさえぎられた。
自分の頬に感じる肌の感触。
目の前にいるその人の不思議な目の色
そして彼は笑った。
そして…いった。
「やっと起きたな…寝ぼすけ」
自分が本気で殺めてしまったと思った彼…
その彼の…あの優しい声
ピカードは目にいっぱいの涙をため
そして自分の頬をなでるガルシアの冷たい手を握り返してこういった…。
「ガ…ルシア!!!」
彼を失ったと本気で思った。
自分は…覚えていたから
自分が…何をし、何をいったのか…
全て…わかってたから
涙が止まらず、
声を抑えることも
忘れて・・・泣いた。
「ピカード…もう大丈夫だから…そんなに泣かなくいい」
「え、ぐ…ガル…シア…」
「…ふぅ」
自分の言っていることが聞こえていないと確信したガルシアは黙ることにした。
そばにいるだけで…いいだろう。
こいつが泣き止むまで…待ってやるか。
その間ずっと片手はピカードに握られたままだった。
その手から暖かさが伝わり、
同時に涙も伝わってきた。
「…」
「大丈夫か?」
結構な時間がたってからやっと泣き声はおさまった。
「…はい、あ!ごめんなさいッ!!」
…とガルシアの手を握っていたとこを忘れていたピカードが
ぱっとその手を離す。
その離された手をゆっくりと、自分に負担がかからないように
ゆっくりと自分の下へと動かす。
そしてピカードは立ち上がり、椅子に座り直す。
静まり返る。
沈黙の時間が長く続く。
――――――――――泣いている場合じゃ…ないんだよ
――――――――――ボクはガルシアに言わなきゃいけないことがあるじゃないか
――――――――――聞かなきゃ…いけないコトだって
言い出すのが怖くて
自分からその言葉をいっていいのかも不安で
これだけのことを犯してしまった自分が
何かをいうなんて…
そういう権利なんて…ないのに…
そう考えているうちに相手の方が静かに口を開く。
「すまなかった」
「!!?」
その言葉に酷く驚いたピカードはうつむいていた顔をあげる。
そして・・・ガルシアに吠え付く。
「な、何で!?何でガルシアが謝るんですかッ!!?
おかしいですよ…だって、ボクは…」
そう言葉を言っている間にもガルシアは言葉を続ける。
「守るといったのに、オレはお前を守れなかった」
ベッドに横たわったまま、声を出すのもままならないような…辛い…声で
そう、言った。
「謝らないで…ボクはそんなの…望んでない!!
ボクはみんなを傷つけた、謝っても足りない過ちを犯した!!」
「でも、約束は約束だ」
「約束って…こんなことになってまで守るものなの?
なんで…どうして…」
「1人で抱えるなって…いっただろう?」
「!!」
随分前に交わした約束…
そしてあの赤い月が現れた夜に再確認したあの約束。
「……」
「深追いはしない、何があったのか追求はしない
で、も…全てを…1人で抱えるな」
胸が痛むのかそこらを抑えながら酷く辛そうな顔をしながら
ガルシアはそういう。
「お前、が…話したくなったら…聞くから」
そういい終えて、部屋はまた沈黙に包まれる。
琥珀色の目が黄金の目を覗いてくる。
――――――――――もしかすると…ガルシアには話せるかもしれない
そう心の中を何かが横切る。
そして…勇気を持ち、沈黙を切り裂く。
「今…なら」
「?」
「言葉…紡げるかもしれない」
「ピカード?」
――――――――――誰にも話したくない、知られなくない
――――――――――でも、偽りの自分は…演じたくない
――――――――――綺麗ナ自分ジャナイカラ…騙シテイラレナイ
「ボクだって…ガルシアのこと信じてる
これをいって自分がどういう立場に置かれるのか…目に見えるけど…
ガルシアには本当のことを話すよ」
――――――――――いつまでも心に封じていたあのこと
――――――――――いつのまにか忘れていた大切な人の存在
――――――――――とても、怖い
今まで自分自身に封じ込めていたこのこと
そして…つい最近に思い出した記憶
「本当のこと?」
「そう、ボクの全て…ボクが過去に犯した”罪”のこと」
「…罪?」
ガルシアは困惑な表情を見せる。
ピカードは一呼吸おいて言葉を続ける。
「ボクは罪を犯した…
ボクは実の父親を…殺したんだ」
「!!?」
ガルシアの目が大きく見開く。
しかしその表情に見向きもせずピカードは静かに
そして淡々と話し始める。
「手に持っていた小さなナイフで…左胸を貫いた
…赤い血が飛び散った
自分でも…何が起きたのか…わからなかった…」
「……」
「ただ、父は謝ってた『すまない』って」
「…それってどういう…?」
「”マリナー”がどういう意味か知っていますか?
父さんは…レムリアの”マリナー”だった」
――――――――――兵士 マリナー
そしてピカードは酷く冷たい表情で
時々越えを震わせて、肩を震わせながら
自分が幼かったときのレムリア
そしてそこに起こった悪夢の話を始めた。
→続く
やっとこさ過去編に入れそうです。
ってか年明けちゃったね(笑)
表においていいんだかわかんないくらいガルピカ要素強い話ですよね;;
今回は前回と繋げようか迷ってたとこなので
つながりおかしいかもです。
「寝ぼすけ」です。
結構な日にちがたったと思っててください。
それでも、どんなにエナジーをかけても兄さんの傷は癒えてないです。
そりゃ、重傷だわな;;
話にあったとおりピカードさんは過去の出来事はすっかり忘れてました。
あれ、で思い出したんですね。リレイクさんのあれ。
”マリナー”は完全に私の解釈っす;;
兵士っていうのは結構作ってますね;水夫、とか水兵とかいう意味があるんですが・・・。
それがピカードさんの父さんのレムリアにおけるお仕事なのです。
そこらへんもかけていけるといいなあ・・・。
次回は過去の世界へご案内〜v
2005・01・01
← →
|