地と水の絆 〜11
「さすがに…きついな」
呼吸することが苦しい、
上手く吸うことができないし、吐けない。
貧血のせいで足元はふらつくし、
雨が傷口を濡らす為、そこらじゅうがズキズキする。
「早…く…行かないと…」
言うことの利かない体を無理に動かす。
覚えている。
ピカードに自分を刺させたとき…の彼の目を…
その目は正気だったから…
「心の傷は…治らないのにな」
傷のおかげで走るどころか歩くこともままならなくなったガルシアは
度々木に寄りかかりながら森へと入っていった。
「はあ、はあ…」
息を荒げる。
歩みを止めたところで息は整うところを知らない。
「ピカード…あいつどこいったんだ…」
痛む右胸を抑えて歩き続ける。
闇に堕ちてしまう前にその手を引かなくてはいけない。
失いたくない存在で
大切な存在で…
守りたい、存在だから…
しばらく歩いていると前方から自分を呼ぶ声がした。
「ガルシア、来ましたね」
「!?」
めまいと雨のせいで視界がぼやける…がおそらくこの声はアレクスだろう。
ただ…一人ではない。
アレクスの肩に支えられてる人の姿に見入る。
浅葱の髪に…レムリア特有の衣装
「…アレクス?」
「身体はもう大丈夫なのですか?」
「ピカードを…渡してくれ」
右胸を押さえつけたままガルシアはアレクスをじっと見る。
「えぇ、構いませんが…今のあなたでは連れ帰るのに無理があるでしょう?
行きましょう、宿まで送ります」
アレクスのその言葉にガルシアは少し驚いた。
そして思ったことそのままぶつけてみる。
「いやに…良心的だな」
そういうとアレクスは少し笑いながらそれに返答してくる。
「ピカードを気絶させてしまったのは私なんですよ、
あ、少しは反省してるんですよ?」
「!!」
ガルシアがきっ、とアレクスを睨みつける。
それをアレクスは訂正しようとする。
「勘違いはしないでくださいね
喜んでそうしたわけではありませんから」
「……」
そうアレクスは弁解するが疑いの目を変えないガルシア。
そしてアレクスはまた笑ってガルシアに手を差し伸べる。
「アーネストプライ」
「…」
幾分か身体が楽になる。
「これで宿までは行けるでしょう、完治はできませんでしたが…」
そういうアレクスを横目に少し照れながらガルシアはいった。
「いい、ありがとう…」
二人は方を並べて歩く。
回復のエナジーをかけてもらったからといってもまだきつい。
雨の音しか聞こえないその静けさを破るように
アレクスが口を開く。
「今回は不明な点が多いようですね」
そういうアレクスの言葉にガルシアは返す。
「…なんでこういう事態になったのかもわからない」
アレクスの肩に支えられているピカードを少し見てからまた言葉を続ける。
「何かあったのは間違いないんだ…だけど」
中途半端に言葉を止めるガルシアにアレクスは聞き返す。
「だけど?」
琥珀色の瞳が先の見えない遠くを見つめる。
ひどく冷たく、寂しい瞳。
「オレにはそれを聞く権利はない
守ることが…できなかったんだからな」
「…」
森を抜ける。
ずいぶんと奥まで入っていたらしい。
「ピカードは…」
「…」
「あなたには全て話すと思いますよ、私は…そう思います」
そういいながらアレクスはピカードを降ろし、ガルシアに受け渡す。
「すみません、宿までといいましたが私はこれで失礼させてもらいますね
彼女にあったら…私は私を見失いそうですから…」
「ああ、ありがとう…後は大丈夫だ」
そうガルシアが返し、その言葉を聞いたアレクスは
テレポートのエナジーでどこかへいってしまった。
「…誰もが同じなんだ…過去を…忘れられるはずがない」
実際ガルシアはアレクスの過去に何があったのかは知らない。
ただその”何か”のせいでイミルに…
メアリィと一緒にいられなくなったのは間違いないんだろう。
「早く…休ませてやらなきゃ…な」
そういってピカードの腕を肩に引っ掛けて宿へと歩みを進める。
「…」
横目でピカードの姿を見る。
ガルシアの…自分の血に濡れた衣服。
彼が目覚めて、これを見たとき…何と思ったのだろうか?
罪の重みに…押しつぶされそうになったに違いない。
雨のせいでよくはわからない…が
でも
彼の目尻は涙で濡れている気がした。
随分と戻ってきた。
時間がたてば経つほど歩くことがままならなくなる。
何度も体のバランスを崩し、
そしてやっと村へと戻ってこられた。
早く宿までいってしまおうと力を振り絞ろうとするが
力もすでに入らない。
同行していたデュオがぴょんっとガルシアのそばを離れ
先に宿の方まで飛んでいく。
宿に一番乗りを果たしたデュオが真っ先にジャスミンの元へ飛んでいく。
「…!!デュオ…」
――――――――――― すぐそこまで戻ってきているよ
何といってるかはわからない、がそういっている気がした。
全員で入り口付近まで駆けて行く。
雨の中に一つの影が見える。
その影は仲間達の姿を確認すると
”後は任せた”というように力なくしてその場に倒れこんだ。
「ガルシア、ピカード!!」
喜びと不安の声が混ざる。
そして一行は倒れてしまった二人を介抱するため宿の中へと連れて行った。
続く。
今回の話…えーっとアレクスは多分こんだけです(笑)
でも「心の傷」ってとこ考えますと
うちのアレクスさんは当てはまるのでそれの顔みせでしょうかね?
兄さん、大怪我でよくここまで頑張ったと思いますよ。
テレポートで送ってやれないアレクスさんわかってやってください;;
メアリィさんに会いたくないんです。
宿までいっちゃったら嫌でも会いますからね…
次回はつかの間、といった感じです。
あまり本編にはかかわらないですね。
ピカード過去話1まで(1だと?)後…2〜3話(長。
次回主なのは・・・ピカード・シバ・ロビンってとこでしょうかね?(接点ねぇ
2004・10・28
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