地と水の絆 〜10





「一体こんな所で一人何をしてるんですか?」
アレクスがそういいながらピカードに近づいてくる。
その様子を見たピカードは手を前に差し出し、アレクスの前進を止める。



「近づかない方がいいですよ、アレクス…あなたも傷つける」
その言葉をほぉーっといった感じで聞き、返す。



「…あなたが私を?ガルシア達のように傷つけるのですか?」
「!!…な、なんでそれを知って…?」
「私はあれの一部始終を見ていましたのでね、
 今、何かにとりつかれているのでしょう?」





ピカードのはその話に言葉詰まった。

「……」
ピカードのきついけど何か悲しい表情に何か思惑があるな、と気付き、
アレクスは言葉を続ける。


「やめなさい、あなたが何でも背負ってしまうと苦しむ人がいる」
「ガルシア…ですか?」
「聞かなくてもわかるでしょう?」




雨は二人を濡らすが、二人の声をそれに覆い隠そうとはしない。






「ここまで逃げてきたのは…”絆”を絶つつもりだったのでしょう?
 これ以上仲間を危険な目に合わせないために…」
「……」

「本調子ではないあなたが今仲間との絆を切ることは自殺行為ですよ」
「黙ってください…」

ピカードの金の瞳がアレクスをきつく睨みつける。
寄りかかっていた樹から離れアレクスに近づいてくる。
それを見たアレクスは少し笑ってこういった。

「やる気ですか?ピカード」

そう言葉を言った後、ピカードはエナジーを発動させるためか手を翳す。
アレクスも軽く手を動かす。
「同じ水のエナジストとしてあなたに負ける気はないですよ」
「う…るさい…」



ピカードのエナジーが発動する。
それはアレクスに一直線に向かっていく、が
アレクスはそれをエナジーで包み込み、そのままピカードに返した。


「う、あっ!!」


ピカードはそのエナジーに押され吹っ飛び、
樹に頭をぶつけその場で倒れた。
「…痛」
目の前がぐらぐらする。
ピカードはそのまま立つこともままならず、その場で気絶してしまった。


その様子を見てアレクスはピカードに近づく。
「あなたが勝てるはずがないでしょう?
 力が違いすぎることくらいわかりきって…」
そういいながらピカードを抱き起こしてやったとき
ピカードは閉じられた瞼の下から涙を流し、こう呟いた。



「とう…さ…ん」









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「大変です!!!」
静まり返った部屋の静寂を破るかのようにメアリィが
ばん、と扉を開ける音をたてて戻ってくる。
「どうしたんだ?メアリィ…」
「ピカードが、部屋からいなくなって…!」
「!?」
誰もがその言葉に驚き顔を見合す。


「ピカードが…逃げたっていうのか…?」
ロビンが驚いた顔をして呟く。
「それはわかりませんわ…何か特別な理由があったのかもしれませんし…」




部屋の中がざわめく。
外の雨の音も鳴り響く。

その騒々しさのせいか

べッドで横になっている者がやっと意識を取り戻す…。


「…う、…」
どんな騒がしさでもみんなその声に気付いた。
少し低めの声、不思議な色をした瞳が姿を現す。
「ガ、ルシア…」
「兄さんっ!!」
「…ここは、?ジャス…ミン?」


やっと目が覚めた兄の姿に安心し、ジャスミンがベッドに泣きつく。
「泣いているのか…?」
布団の中から腕をだし、ジャスミンの頭を撫でてやる。

「にい…さぁんッ!!」
「みんな無事、だったみたいだな」
所々に包帯を巻いてはいるものの
みんなが元気そうな姿をみてガルシアは安心した。

その後あたりを見回しあることに気付く。
両腕をついて自分の上半身を起こす…が
それを同時に右胸に激痛が走る。
「――――――……!!!!!」
その痛みに耐えられず身体を折り込む。
嫌な汗が流れる。

「ガルシアッ、まだ傷はふさがり切ってないんですから…安静にして下さい!!」
「…あいつは…ピカードはどうした?」
顔色はかなり悪いがきつい瞳でそう言い放つ。




「無事だった、ってのがあたりだな」




腕を組み、壁によりかかってロビンはそういった。
「どういうことだ?」
「さっきまではいたんだが…今は行方不明だ」
「!!」

ガルシアは右胸を抑えながら必死に体を起こす。
息を落ち着かせて完全に起きようとする。

その姿をみてみな制止をかける。



「ガルシア、何やってるのよ?…あなたは休んでいないと」
「そうですよ、ピカードは僕らで探しに行きますから」
風の2人はそう言うがガルシアは聞かない。
そこにおいてあった自分のブーツを履こうと足をベッドから出す。


「ガルシアッ!どこまで無茶を重ねるつもりなんだッ!
 いい加減にしろ…オレ達がどれだけ心配したと思って…」
ロビンが怒りをあらわにする、が
ガルシアはその言葉にこう返答した。




「ピカードは…一人だ」





「…!」
「だからオレはあいつに付いてやらなきゃいけない
 約束を…守らなきゃいけないんだ」
「約…束?」


誰も知らない…
二人だけの約束。










「ピカード、まだここにいたのか」
「…」
「もう何日間ここにいるつもりだ?…身体壊すぞ」
「わかっています…ここにいたって母さんは戻らないって…だけど…」

金の瞳が潤う。

「ボクがここを出る運命であったとしても…
 ボクがあの津波に飲み込まれなかったら母さんは…まだ…生き…てっ」

綺麗な金の目から涙が零れ落ちる。

「レムリアでは…母に守られていたんだな…」
「…ガル…シ」

頭を抱えて抱きしめてやる。

「忘れろ、とはいわないから…
 これからはオレに守らせてもらえないか?
 お前を…オレは守るから」







オ レ ガ 守 ッ テ ヤ ル カ ラ


















「…やっぱり譲れない」
「…ガルシア?」

傷は治りきってないし、顔色は頗る悪いというのに
行かせてくれ、というガルシア。

みんなが反対する中…一人だけガルシアの意見を通そうとしたものがいた。


「いいよ、兄さん…お願い、ピカードを助けてあげて」


誰もが彼女を見る。
まさか、彼の妹がこれをOKするとは誰も思っていなかった。



「ジャスミン…」
「そのかわりね…お願いがあるの」

「…何だ?」
「ジンを連れて行って、何でもいいわ
 そうね…デュオ、お前が行って…」
ジャスミンに指名されてデュオが飛び出してくる。
「デュオ、兄さんに何かあったら戻ってきて
 そしたら私達すぐ駆けつけるから…」
「ジャスミン?」

ガルシアにはジャスミンが一体何をしているのかわからなかった。

「…??」
「はて?、っといった顔してるわね、兄さん」
デュオを撫でながら自分の兄を睨みつける。
「この雨の中行くことがまず自殺行為だわ…
 途中どこで倒れてもおかしくないでしょ?だから護衛よ」


デュオがぴょんぴょん、とガルシアの元に飛んでくる。
「わかった、ありがとうジャスミン」
「おい、勝手にッ…!」
ジェラルドが言葉をかけようとしたがジャスミンに止められた。






ガルシアはふらつく足で外へ駆け出していった。










「ジャスミン…なんで行かせたんだ?」
ロビンが深々をした感じで聞いてくる。
「仕方・・・ないじゃない」
「はっ?」

一同はジャスミンの言葉に驚く。
怪我人相手に仕方ないとは…

「知ってるでしょ?兄さんは頑固なの、一度決めたら降りないわよ」
「そ、それでも今のガルシアは…」
イワンが言葉を挟む。
「うん、さっきまで生死を彷徨ってるような状態だったけど…
 駄目なの…止められない」


ジャスミンはスタスタと窓際へと足を進める。


「それが私の兄さんなのよ…
 そして今回ピカードを救えるのも…きっと兄さんだけだわ」



「…もう、信じるしか…ないのよ」



声が震えている。
窓の方を向いてるためみんなからは背しかみえない。
小さな肩を震わせているのが…よくわかる。




ポンッ




「!!」
ロビンがジャスミンの隣に来て肩を叩く。
「あいつの妹のジャスミンがいうんだ…信じるよ
 二人無事戻ることを…」









――――――――――――祈ってやる




――――――――――――ピカード、お前をもう一度信じてやる









――――――――――――…帰って…来い




六人は二人が無事に帰ってくることを…

心から祈った。



   =続く=










結構早めの投稿が出来て満足でしたー

兄さんあっさりでしたかね?
大地の生命力ということで!!(ムリがアリマス
ロビンさんが悪態ついてて…何故かそんな子供っぽい
ロビンさんが好きなのですがッ…笑
あの日記に放置してた話も悪態だしね

やっとこさ近づいてきたな!!過去話!!
まずは再会しないとですが!!
大怪我の人を普通雨のなか行かせるか妹、と突っ込めますが
気になさらず!!
相変わらずなへんてこな文で読みにくいのです(泣)

次回アレクス・ガルシアさんが会いまして
過去にちょこっとかじりたいです。
 
2004・09・05