悪夢は突然訪れた。 夜でもないのに月が出ていた。 その暗い空の中で月は赤く光っていた。 空に魔物が飛び交い、空が赤と黒に染まる。 陸には魔物が大量に這う。 その事態が起こったときヴィドは家族を王宮に非難させるため付き添っていた。 外から王宮の兵の声がする。 「魔物が侵入してきた!全員こちらへ非難しろっ」 そんな兵の声。 魔物に怯えるレムリアの民の声。 「父…さん」 ピカードがヴィドの服を少し引っ張って呼び止める。 とても不安そうな顔をしている。 その様子を見たヴィドは身を屈めてピカードの両肩に手を乗せる。 「行って来る、誰かまだ非難できていないかもしれない レムリアは私が守るよ、だから…安心して待っていなさい」 そういってヴィドは王宮からでようとした。 それに、制止がかかる。 「ま、待って!!」 振り向く。 そこにあったのは真剣な顔をしたピカードの姿。 「ボクも行く!!何か…手伝わせて!! 父さんが怪我して帰ってくるの…黙って見ているなんてイヤだ!!!」 「・・・・」 2人が見つめ合う。 その間に一つの声が入る。 「あな、た…ピカードを戦場へ連れて行くつもりですか!?」 「・・・」 ―――――――――――――連れて行きたくない 危険にさらしたくない ―――――――――――――でも、こいつの決意を無駄にはしたくない 「ピカードの決意が…固いものだとしたら…私は許すよ」 リズが不安そうな表情をする。 「あなた・・・」 そしてその言葉を聞いたピカードがヴィド譲りの金の目を父に向ける。 「行かせて・・・父さん」 強い目をしている。 本気だというのが、ちゃんとわかる。 「よし、わかった・・・行くぞ」 そしてヴィドとピカードは魔物が群れる外へと飛び出した。 「お前に、これを渡す」 ヴィドがピカードに小さい剣を差し出す。 「戦わなくていいが、いざという時には使え、いいな?」 「う、ん」 「お前は東の方に人が残ってないか確認してきてくれ」 とヴィドが東を指差し、ピカードに指示した。 「うん!」 そう元気な返事をして、ピカードは東へ走っていった。 「無茶はするなよ!退く事も忘れるなっ!!」 ----------------------------------------- 「誰か、いる?」 走ってきたものの人の気配はない。 もう粗方は王宮に非難することができたということだろうか。 「ピカードにいちゃん・・・・」 「?」 レムリアのある泉の近くで声を聞いた。 そっと、近づく・・・ いつも外で走り回ってる子だ 「ほら、早く逃げないと!早くっ」 「妹が、どこかいっちゃったんだよ!!」 「え!?」 「騒ぎが起きた後すごい勢いで走っていっちゃって・・・・ み、見つけないと・・・魔物に襲われてるかもしれないもん・・・!」 そういう子の手をピカードはひいた。 そして・・・いった。 「見つけよう!大丈夫、みんな大丈夫だから!」 そうして二人は東側の探索を始めた。 ―――――――――――――舞え 空に黒い影が舞い始める。 他の魔物とは違う力がレムリア中に広がっていく・・・。 ―――――――――――――エサはいくらでもある ―――――――――――――お前がいいと思ったものを喰らえ、ファウナッハ そうするととの黒い影から金の影が姿を現した。 金の影は近くを飛んでいたガーゴイルの器を借り、レムリアを舞い始めた。 「・・・・!!」 先程と空が違っているのがわかる。 違和感がある。 威圧感がある。 竜の形をした黒い影。 そして、今。 そこから現れた金の影・・・・ 目に見えるその金は 東の空へと飛んでいく・・・ 「ピカード!!!」 抜いた剣で敵をなぎ払いながらヴィドは東へと走った。 まだ魔物は東側には達してはいないけれども あの金の竜が向かったからには・・・危険が増したのは間違いない。 「どこいったの?」 「い、ない??」 二人はずっと探していたが、その妹はいつになってもみつからなかった。 「西側にいこう、父さんがわかるかもしれないし・・・・」 そういってピカードが走り出そうとした瞬間 一緒に連れていた子の前にガーゴイルが降り立った。 目が金色でぎらぎらしている。 ガーゴイルの目がぎょろぎょろとして、子供の奥にいたピカードをみた。 ―――――――――――――金の目・・・私に似ている・・・・そして、レムリアの民 ―――――――――――――この子を喰らおう。しかしまずは、そこにいる邪魔ものを片付けるとしよう そしてガーゴイルはその鋭い爪を目の前にいた子供に向けた。 「危ない!!」 ピカードが走っていって、瞬時に子供の上に覆いかぶさった。 「ッ!!!!!」 「・・・・?」 痛くなかった・・・ ガーゴイルの爪を、背で受けたはずなのに。 閉じていた目を開けると 自分の上にもう1つ影があることがわかった。 その影から赤い血が流れて 地面と、自分に滴り落ちていく。 「二人とも、無事か?」 声を出すのも苦しいようだ。 でも、その声は聞いたことのある声。 「父・・・さん?」 『・・・・・』 血が流れる。 しかしヴィドは傷なんか気にしている場合じゃないといってるように ピカードの肩に両手をかけた。 「この子の妹は先程見つけた、後はお前達が王宮に非難したら終りだ 王宮にはもう結界が張られてるから、早く逃げなさい」 血が流れる。 ガーゴイルは爪をヴィドに食い込ませたまま動かない。 「痛ッ・・・・」 「父さ・・・」 「大丈夫、見た目ほど深い傷じゃない、大丈夫」 「で、でも!」 ピカードは混乱状態に陥っていた。 目の前の敵と、血と・・・・全ての要素に混乱していた。 「でも、また父さん、ケガした・・・・ケガさせた・・・・!!」 「ピカード!!!」 「・・・あ・・・」 ヴィドの怒鳴り声にピカードがびくっと反応する。 「退路は確保してきた。そのまま走るんだ、後で追いつく」 そういってヴィドはガーゴイルの腕をつかみ 自分から引き剥がし始めた。 ピカードは子供をつれて、その場を離れた。 ―――――――――――――お前もか 「・・・・・・ッ!」 ガーゴイルは石で出来た魔物。 剣ではなかなか切れないし、強い。 肩に食い込む爪がなかなか離れない。 ―――――――――――――お前も・・・金の光をもつ ―――――――――――――好都合だ、器には丁度いい・・・・・ ―――――――――――――それに、こいつからは力を感じる ―――――――――――――これに、しよう ガーゴイルがいきなり力をなくした。 同時にその爪からヴィドの体内へと何かが流れる。 金色の、まぶしい光。 「ぐ、あ・・・・・・」 体中に激痛が走る。 何かが自分の中へ入る。 ガーゴイルではない違うものが・・・ 体が、熱い・・・ 「うわあああああ!!!!!」 ヴィドは金の光に包まれて そしてその光が消えたと思ったら ヴィドはその場に倒れた。 そしてガーゴイルは砂となって消滅した。 ―――――――――――――撤退 黒い影がそうつぶやいた。 空の魔物、陸の魔物、全てが消えるように去った。 空も戻る。 赤い月は出たままだけれども 黒い空が、青い空に姿を変えた。 さっきまで何があったのかわからないほど 痕跡は跡形もなく消えた。 残っている痕跡といえば 地に倒れているヴィドの血のみ。 「父さんッ!」 「おい、ピカード!まだ危険だ!!」 空が晴れたのをみて、ピカードは王宮を抜けて駆けはじめた。 それをルンパが追いかける・・・。 足を止める。 息を呑む。 父は倒れている。 血にまみれて・・・・ 「い、いやだ・・・・」 ―――――――――――――ボクが・・・ボクが・・・ 「ピカードッ・・・・」 ルンパが息を切らして走ってきて、やっとピカードに追いつく。 「・・・ヴィド!?」 ルンパが急いでヴィドの側による。 息は、ある。 「いやだあああッ!!!!!!」 「ピカードッ!ヴィドは大丈夫だ、すぐ手当てを・・・・!」 「ボクが・・・・ボクが・・・!!!」 「大丈夫だ!!!ピカードッ!」 「ッ・・・・!」 ルンパの声に我に返って そして二人はヴィドを王宮へと運んだ。 →続く 悪夢の話にやっとこさ入りました・・・。 ← → |