求めし者の叶わぬ夢 [後編]
その表情は…
明らかに殺戮のものではなかった。
酷く…辛そうにしている。
「アレ…クス??」
ピカードはアレクスに一声かけた。
するとアレクスはピカードを地に降ろした。
「げほ…ごほ…アレク…ス??」
首を掴まれていたせいで呼吸がなかなか整わない。
ザァァァ…
アレクスは下を向いている。
ピカードの首からも手を離した。
『どうしたんだろう』とピカードが心配し始めた時
アレクスが口を開いた。
「どうしてなんでしょう?
何故…殺す事をためらってしまうのでしょう?」
「?」
「私はレムリアを滅ぼしに来ました
そしてあなたも滅ぼしてしまおうと思いました」
ザァァァ…
雨が二人を強く打つ。
「何故…滅ぼせない?
私はそれだけの力を手に入れたのに・・・何故」
アレクスは自問している。
”…何故、滅ぼせない?”
言われてもピカードにはわからなかった。
何故彼は滅ぼそうと思ったのだろうか?
滅ぼしても…何も得る事はできない。
それはアレクスにもわかっているはずなのに…
――――――――――――――!!!!
さっきのとても辛そうな顔。
何故彼はあんな表情をしたのだろうか?
言っている事とやっている事が全然違う。
アレクスの本当の姿が…見え隠れする。
「ピカード」
「えっ?」
アレクスが話しかけてくる。
「何故…なんです?」
「何が…?主語がなくてよくわからないよ?」
「何故…人は死ぬのでしょう?」
「!?」
昔のピカードが思っていたことと同じ。
同じ質問。
そう、わかっていた。
自分が一人になってしまうことくらい。
そんな自分もいつかは死んでしまうけれど…
それは遠い未来の話。
自分も思った。「何故人は死ぬのだろう」と。
「私は…メアリィの死を見届けたのです。エナジーだけを飛ばして」
「…」
「彼女はいったんですよ
逝く最後に『アレクス』って…私の名前を呼んだのです」
その間も二人を雨が叩き付ける。
アレクスは言葉を続ける。
「何十年もたっていたのに…メアリィは私の名を呼びました。
彼女は私がいなくなったあとも私を必要としてくれたのです。
…なのにメアリィは死んでしまった。
何故でしょうね?
自分を必要としてくれたものがいなくなると
自分の存在価値はなくなる…そう思うのです。
皆が長く生きることが出来れば…こんな喪失感が生まれる事もないのに…」
アレクスの瞳は憂いを秘めている。
とても悲しい瞳だった。
さっきピカードを殺そうとした者と同一人物とは思えないほど…
「ボクにもわからない」
ピカードは答えた。
「ボクも…アレクスと同じことを考えていました。
何度も自分が嫌いになった…何故自分はレムリアの人間なんだろうって」
あの時も…喪失を恐れていた・・・。
怖かった…
・・・・・・
「でもアレクス…一つ間違ってます。
自分を必要としてくれる人がいなくなると自分の存在価値はなくなる…
これは違うと思うんです。
自分の存在価値は自分で作っていくものです。
確かに存在価値はなくなってしまうかもしれない…
でも、それをいかに元に戻せるか…それが人の力…」
「・・・・」
「結論言えば正直ボクにもわかりません
難しいです…その質問は」
ピカードは笑いながら答えた。
そして…アレクスが口を開く。
「そして…もう一つ」
「?」
「私は何故ここに来たのでしょう?
始めは滅ぼすつもりできました
でも、あなたを攻撃してから…そんな気持ちが消えたんです
私は本気であなたを殺そうとしたのにですよ?わから…ないんです」
つじつまがあった。
だからアレクスは辛そうな顔をしていたんだ…
殺す事をためらい、ピカードを地に降ろし…
そして…わからなくなって…
”自分を必要としてくれる人がいなくなると自分の存在価値はなくなる”
「!!」
わかった。ピカードにはわかった。
アレクスがここに来た理由。
決して滅ぼす為じゃない…もっと純粋な答え。
「ボクに…会いに来たんですね?」
「え?」
そうピカードが出した答えはそれ。
さすがのアレクスもびっくりしている。
「今この時代でアレクスの事を覚えているのは・・・ボクくらいだから」
ボクに必要とされて欲しかったんでしょう?
そして自分の存在価値を…
メアリィを失って同時に失った存在価値を取り戻す為…
作り直す為…
「ボクに会いに来た」
「・・・・」
アレクスは黙ったままだ。
何も答えない。
「何も言葉を返せないんですよ…」
アレクスが言う。
「あなたの言う通りなのかもしれません
だから…ここに来たのかもしれません」
アレクスはピカードのいったことを認めたようだ。
雨は降り続く。
「錬金術は…完璧なものではないのです」
「?」
「人を生き長らえさせたり、生き返らせたりすることは出来ません
私のこの力を持ってしても…
もうメアリィには会えないのです
メアリィを生き返らせることはできないのです」
そしてアレクスは遠くを見つめて言う。
「叶う事なら…もう一度メアリィに会いたい
会って…話をしたい…でも…」
アレクスは言葉を続けようとしたがピカードがそれをさえぎった。
そしてアレクスに語りかける。
「でもさ…メアリィがいなくなっても
アレクスはいるじゃないか
アレクスの存在価値は…失われてなんかいないじゃないか」
「ピカー…ド」
「錬金術は万能なものじゃなくても
アレクスはここにいる
やっぱり、アレクスの考えは間違ってるよ」
『くすっ』
「え・・・」
アレクスが微笑しながら言う。
「…私があなたに説教されるなんてね…
私も落ちぶれたものです」
「な…なんだよそれ!!!
ボクをバカにしてるってこと!?」
「そんなところですね」
〜〜〜〜!!!!
そういわれて、さすがのピカードも怒る。
(…ただそれは本気ではなかったが…)
「あ…」
ピカードは気付いた。
あのアレクスが…笑っていた。
自分の心にかかっていた霧が晴れたように
満面の笑みとはいえないが…曇りのない笑みだった。
「だから…アレクス」
ピカードがアレクスに言う。
「自分の存在価値が…なくなってしまった時は
ここに来て
ボクはここにいますから…
その時はアレクスがなくしてしまったものを一緒に探しましょう
またアレクスの存在価値が見つかるように…」
嵐が止んだ。
…というのかアレクスが止めたらしい。
空には大きく輝く太陽が顔を現わし
さわやかな風が吹く…
その風にあたりながらアレクスは言う。
「フフフ…私は全てを失ったわけではなかったのですね
あなたがまだいました…
私の心が覚えていたのでしょう
私を覚えているものは…レムリアにいると…」
「・・・・アレ」
「ピカード…ありがとう」
「アレクス??」
「私は取り返しのつかない事をするところでした
でもそれは違うと…気付かせてくれた…
私はあなたを殺そうとしたのに…私を優しく迎え入れてくれた、ありがとう」
〜〜〜〜〜…
「あ…!!」
アレクスは姿を消してしまった。
しかし…声が聞こえる。
声が風に運ばれて来る…
『またここに来ましょう
自分を見失わないように
そしてまた気付かせてもらうために
その時は…お願いしますよ』
「はい!」
声が消えた。
静けさだけが残る…
「はあーーーー」
ピカードはため息をついた。
「アレクスってあーゆー奴だっけ?
もう少し…違うと思っていたんだけどな…」
大きな力を手に入れても…
人間の弱い部分は消えはしないんだ。
アレクスも…一人が怖かったんだ…
同じ気持ちを持つ者に会えた。
前は敵対していたけれど今は…違う。
敵に思えない。
敵じゃない…仲間なんだ、アレクスも。
ピカードは空を仰いだ。
嵐がきたせいで道という道はずぶぬれだが
なぜか気分がいい。
「さて…どこに行こうかな?」
自分が一人でないことがわかった。
足取りが軽い。
そして…ピカードの一日が始まる…。
=終わり=
お疲れ様でした〜〜アレクス&ピカードなんて聞いたこともないですね。
テンポが悪いです。…というか突っ込みどころ満載ですww
ピカちゃん…王様に会いに行くんじゃなかったの??(笑)
…自分の文才のなさを悲しく思います…台本書きっぽいじゃん!!これ!!
情景を入れたかったんですが…雨だし…言葉が見つからなかったし…
…だめじゃん。
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